チャプター 62

数歩離れた場所に立ち尽くしたまま、エミリーはチャールズの顔に浮かんだ、普段は滅多に見せない穏やかな微笑みを見つめていた。鼻の奥がツンと痛み、一歩も動くことができなかった。

周囲の街灯が次々と瞬くように点灯し始め、薄暗くまだらな光の模様を落としている。黒のマイバッハの前に立っていたチャールズは背筋を伸ばすと、片手でキャンドルの炎を風から庇いながら、ゆっくりと彼女に向かって歩み寄ってきた。

突然、彼の低い声が夜の空気に響き渡り、歌い出した。いつもは冷ややかなその響きには、思いがけないほどの温もりがこもっていた。

エミリーはどこか呆然としたままその場に根を下ろし、瞬きすら忘れて、自分の方へと歩...

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